お元気ですか?荒川区議の大月です。

行政のデジタル化、いわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉がすっかり日常語になりましたが、実はその前段階として避けて通れない“大工事”が進行していることは、意外と知られていません。それが「システムの標準化」です。これは区の判断ではなく、国が法律で「やりなさい」と決めたもの。つまり、自治体ごとにバラバラだったシステムを、共通仕様にそろえましょうという国家プロジェクトです。
荒川区の場合、13課・18システムが対象となっており、今年度末にかけて7システムの移行を開始、残りも順次リリース予定です。とはいえ、システムの世界は「予定は未定」。ベンダー(開発事業者)が撤退したり、国の仕様が急に改定されたり、法律改正が追い打ちをかけたりと、イベントが次々と発生しています。区職員の皆さんも、サーファー」のように、次々と迫る波と戦っているのが現状です。
しかし、私はここで強く申し上げたいのです。
――「標準システムの導入は、ゴールではなくスタートラインだ」と。
今は「標準化」という名の基礎工事の真っ只中です。ここで最も大事なのは「区民に迷惑をかけないこと」。リリース時の障害は“発生する前提”で構え、現場との連絡体制、即応チーム、旧システムのバックアップ稼働など、万全の備えを整えておく必要があります。
私もシステムの現場に携わった経験がありますが、テスト環境がどれだけ完璧でも、本番リリース当日は「必ず何かが起きる」のがこの世界の定番です。いざと言うときの為に、紙での受付対応、人員補充、ベンダーSEの待機体制――こうした“地味だが重要”なリアルな準備こそが、区民サービスを止めないための鍵となります。
一方で、最近、他の会派から「DXをもっと推進すべき」という意見も出ています。それは私も大賛成です。むしろ区民の関心は「DXで何が便利になるの?」という点にあります。ただし、DX推進が「標準化作業の足かせ」になってしまっては本末転倒です。基礎が固まらないうちに上物を建てると、後から歪みが出て結局コストが増える――これはシステムの世界でも建築でも同じ原理です。
だからこそ、私はこう考えています。
「まず標準化を確実に、そして静かに終わらせる。そして次に、区民の目に見えるDXの“成果”を一気に加速させる。」
【続く】